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「失楽園」における爆笑問題、でも食べたい[ ]

どちらが先だったのか今となっては定かではないが、10年と少し前、わたしは渡辺淳一著「失楽園」上下巻を読み、その映画化された物をわざわざ映画館に観に行った。読んでから観たのか観てから読んだのか、全くもって覚えていない。覚えているのは、どちらにおいてもきっちりと爆笑したことである。
別に笑える話ではない。ご存じの方も多いと思いますが、お互いに配偶者のある男女が不倫の恋の果てに心中する、という話である。そしてその心中の仕方がなかなかショッキングでもあり、話題になりました。
わたしは小説よりは映画の方が好きでしたね。
小説の方は、著者にとってありがたい女性像が満載で、多少胸くそ悪くなったものだった。映画でも勿論その要素は見て取れたましたが、映像が美しいのと役者が素敵なのとで、なんとなく誤魔化されて観られたと記憶している。
なんというかさあ、昼は淑女で夜は娼婦?みたいなの、そういうの好きなんだろうなあ……ニッポンノオジサンって……いや、著者の趣味なのかなあ。まあどちらにせよ、そのあまりの都合の良さに鼻白んだり苦笑したり。
脱線しますが、映画で、久木と凛子(「失楽園」の不倫カップル)がどこかで薪能を観た後ホテルの部屋に帰って速攻燃えるシーンがあったのですが、それ以降、薪能と聞くと久木と凛子のというか役所広司と黒木瞳の乱れっぷりが脳裏を過ぎってしまう。「薪能、一度観たいなあ」と思っても、その直後にふたりの官能的な様態が浮かんでしまう。このままだと、薪能自体がいやらしいもののように感じられるようなりかねなくて、とっても申し訳ない。薪能に。お能の人に。
戻ります。
先にわたしは「失楽園」を読んでそして観て「爆笑した」と言いました。その爆笑です。
「失楽園」では、同じ物を2回食べるシーンがあります。
いったい何を食べていたかというと「鴨とクレソンの鍋」なんですが、一度目は久木と凛子が二人で会うために用意したマンションで。
それまではホテルでしか会えなかった二人が部屋を持てたことで、料理を作って二人で食べるというのがすごく嬉しかったのだろう。盛んに「おいしいわー、ふたりでいただくと、どうしてこんなにおいしのかしら」とかなんとか凛子が言っていたような気がする。
おまけに凛子の大好物らしく、「君の好きな」「わたしの好きな」「鴨とクレソンのお鍋」とかなんとかいう陳腐な台詞を吐きながら、彼らは盛んにそれを食べるのである。
ここでまず爆笑。何もふたり揃って料理名を確かめ合わなくても良かろうに。それに「お鍋」ってなんだ。「鍋」でいいだろう。「鴨とクレソン」でちょっと気取った料理名も「お鍋」で膝の裏をつつかれたようにがっくりくるではないか。
そして彼らはもう一度それを食べるのだ。それも、心中する直前に。シャトーマルゴーをグビグビ飲みながら。そして彼らはまたもや口を開く。「鴨とクレソンのお鍋」「わたしたちの思い出の料理」。
お願いですから、死ぬ直前なんですからもう少し神妙にしてください。「お鍋」は止めて下さい。それから、初めて食べるわけじゃないんだからいちいち料理名を口にしないでください。おまけに「思い出の料理」って。なんで体言止めなんだ。
ともかくこの二つのシーンでわたしは大爆笑し、一緒に映画館に行った友人からひどく顰蹙をかったものだった。なつかしい。
ところでこの、「鴨とクレソンの鍋」を一度食してみたいと10年来思い続けているわたしではあるのですが、どなたかレシピを知りませんか?
食べた後に心中したりしないので、是非教えて下さい。あの、久木と凛子が食べてたのと同じのが食べてみたいのです。レシピを知りたいという、ただそれだけのために長文を書いてしまいました。